こんにちは、三浦千佳です
毎日暑いですね!
こんな季節は、ひんやりとした室内で芸術鑑賞はいかがでしょうか?
現在、姫路文学館では、「絵本作家 いわむらかずおの世界」を開催しています。

みなさんは、このネズミの絵をご覧になったことはありますか?
自然の中で暮らすヒメネズミの大家族の四季折々のいとなみを描いた「
14ひきのシリーズ」を中心に世代や国境を越えて多くの人に愛されているいわむらかずおさんの世界

今回の特別展「絵本作家 いわむらかずおの世界」は巡回展ではないので、
全国で姫路市のみで鑑賞することができる展覧会です。
また姫路文学館だけの特別企画として、絵本作家 いわむらかずおさんがどのような人物だったのか、
その人となりを深く掘り下げています。
それでは、第1会場からご紹介します。
第1会場で、まず展示されているのは、いわむらさんの幼少期の資料です。
疎開中に体験した、つらくてさみしくひもじいおもいをして泣き叫んだことや、
戦後学校の先生だった両親とともに、自然の中で貧しくも工夫しながら楽しく暮らした経験が、のちの作品の中に反映されているといいます。
現在のいわむらかずおさんがどのように形成されていったのか、その人となりをじっくりと見ることができます。

勉強もスポーツも優秀だったといういわむらさん。なかでも図工の時間に一番心が開放されることに気付き、芸術の道へ進むことを決心します。東京藝術大学に進学し、その後、創成期のNHKテレビの子供向け教育番組に携わりました。
みなさんは「ア~イアイ、アーイアイ、おさるさんだよ♪」という歌を聞いたことはありますか?じつは、日本で初めてそのアイアイのデザインを手懸けたのが、まだ学生だったいわむらさんだったというのです!「会場にはその時のペープサート(紙人形)も展示されています
初期のそのまた初期の作品まで鑑賞することができるんですね!

このように、最初から子ども向けの仕事に携わったことが、今後の活動にも大きな影響を与えていきます。
その頃、日本では、絵も文も両方を手がける絵本作家がまだ少なかった時代。いわむらさんは、海外のすぐれた絵本作家たちの作品に刺激を受けながら、自分の作品をどのように仕上げていくのか多くのアイディアを練っていました
そして満を持して、31歳の時に2作同時発売と華々しくデビューを飾りました。

それがこちらの「
ぷくぷくの絵本」です。
第1会場ではこの他にも、初期の作品や異色の作品をじっくりと楽しんでいただけます。
脂が乗って、野心的な時期のいわむらさん、タッチや画材もどんどん変化していくので、その移り変わりもお楽しみください

そのころいわむらさんに大きな変化がありました。
雑木林を歩いていた時のこと。自身の中の「子ども」が湧き上がってくるような懐かしさに包まれ、少年時代に遊んだ自分の原風景だと気づいたのです。
そんな自然の中での視点が、一番心を動かされると感じたいわむらさん
家族とともに、栃木県の大自然の中に移り住み、畑を作りながら創作活動に携わるようになります。

そしてその頃からいわむらさんが、
ペーテル・ブリューゲルという画家の版画作品に影響を受けて模索しはじめたのが
「一つの画面にたくさんの情報」を盛り込む絵本作り。これまで、ページを次々とめくるのが楽しい絵本が多かったのですが、一つの画面にじっくりとどまる絵本も面白いのではないか?そんな思いが、のちに大ヒットとなる「14ひきシリーズ」シリーズにつながっていきます


第2会場ではまず、そんな「14ひきのシリーズ」の前身ともいえる多くの作品が展示されています。
そしてお待たせしましたこちらが、「14ひきのシリーズ」のコーナーです。
1983年に、2冊同時発売となった「
14ひきのひっこし」「
14ひきのあさごはん」は、大変話題となり、その後「14ひきのもちつき」まで全12冊、世代をこえて世界中で愛されるロングセラーになっています


まず、注目していただきたいのが、絵本の表紙裏に描かれているこの絵!
大きな木の根本にお家を作って生活しているのですが、工夫しながら川から水を引く様子や、おじいさん、おばあさんから、子どもまで3階建ての家に3世代が部屋分けされて生活している様子が愛らしい絵で描かれています。
細かな部分まで描かれていて見応えたっぷり。何度見ても新しい発見があります
また、カバーと表紙が微妙に異なった絵で描かれているのも隠されたお楽しみの一つです。チェックしてみてください

そして、この絵本の一番の魅力は、14匹もの登場人物が、あきまつりをしたり、ピクニックに出かけたりと、一つの目的に向かって、それぞれ個性と役割を持ちながら動いているところです。いつも張り合っている兄妹がいたり、たとえば、朝起きる時の描写一つをとっても、おねしょしていたり、ベッドからおちていたり、もうすでに起きて着替えていたり、、、
一匹一匹に物語があって、1枚の絵をいつまでも見ていられるくらい面白いです
実は、いわむらさん自身も、五人の子供の父親です。ですので、まるで、我が子を見るような視点で、イキイキとネズミのきょうだいたちが描かれています。

また、日々雑木林を歩き回りながら自然と対話していたいわむらさん。
自然の描き方もどんどん奥深くなっています。そのあたりにもご注目下さい
自然からの恵みを受けて暮らすこと、家族揃って食事を取ることなど、普遍的な家族の幸せが淡々としかし繊細に描かれているところも、世界中で愛される魅力の一つかもしれませんね

また、第2会場周辺では、絵本の中に出てくる「
カードゲーム」や「
とんがりぼうしゲーム」を実際に体験することができるコーナーや、

入場無料の南館では、いわむらさんの絵本を自由に読めるコーナー、
カラフルなこむぎねんどで「ちいさなごちそう」を作ろうのコーナー、
ネズミに変身して写真を撮ることができる「記念撮影コーナー」など
様々なお楽しみコーナーも設置されていますのでぜひ体験してみてください

原画ならではの透明感や奥行き、繊細なタッチを堪能することができる「絵本作家 いわむらかずおの世界」は、
9月2日(日)まで開催中です。

関連イベント
朗読と音楽で楽しむ「ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ」
日時:8月25日(土)午後2時~3時